衛星電話とは?特徴やメリット・デメリット、利用方法や活用の仕方を解説
「衛星電話というものを知ったが、スマホとの違いがわからない」という方は多いのではないでしょうか。
衛星電話とは、スマホのように地上の基地局などのインフラを利用するのではなく、人工衛星を利用して通信する電話機や通信サービスのことです。
衛星電話は利用方法やデータ通信速度などにさまざまな制約があり、利用料金も普通のスマホよりも高額になりますが、基地局からの電波が届かない海上や、空を飛んでいる飛行機でも利用できるのが特徴です。
今回は衛星電話と普通のスマホの異なる点や、衛星電話のメリット・デメリット、利用方法や活用の仕方などを解説します。
衛星電話とは?普通のスマホと違う通信方法
衛星電話は通信用の人工衛星と直接通信する電話機や通信サービスのことです。衛星電話専用の端末やスマホを利用して、人工衛星とやり取りします。
衛星電話は人工衛星からの電波が受信できる環境があれば通信できます。そのため、広い範囲で利用できるほか、多くの人が利用できる特性や、災害時にも利用できる特長を生かしてさまざまな場面で活用されています。
たとえば、山間地や離島、外洋を航行している船や、航空機など、地上の基地局からの電波が届きにくい場所での通信手段として利用されています。
しかし、基地局による制約がない一方で、人工衛星からの電波を遮ってしまうような遮蔽物がある場所では使えなかったり、アンテナを正確に人工衛星に向けなければいけなかったりと、制約も多くあります。
さらにデータ通信料も高く、1KB単位から料金がかかる料金プランもあるため、少しのデータ通信でも利用料金が高額になってしまうことも珍しくありません。
地上から遠く離れた人工衛星を経由して通信するため、地上のインフラを利用したデータ通信と比較すると、データ通信速度も遅くなります。
普通のスマホでも衛星電話が使える時代へ
多数の制約があった衛星電話ですが、近年ではさまざまな技術が投入され、目覚ましい発展を遂げました。以前は専用端末とアンテナが必要だった衛星電話ですが、市販のスマホでも人工衛星との通信が可能になりつつあります。
2022年にはiPhone 14シリーズに人工衛星を経由してSOSを送信する機能が搭載され、世界各国で順次サービス提供を拡大中です。iPhone 15シリーズにも衛星通信の機能が搭載されており、今後標準機能になると考えられています。
また日本国内でも、各携帯電話会社では衛星電話と市販のスマホをつなぐサービスの展開が進んでいます。
2023年には楽天モバイルと米AST SpaceMobileの共同実験で、世界ではじめて低軌道衛星と市販スマホの直接通信試験による音声通話に成功しました。2026年内には通信衛星を利用したデータ通信の実用化と提供開始の準備を進めています。
一方KDDIはスペースXが展開するスターリンク(Starlink)の通信衛星を利用して、スマホでSMSなどのメッセージの送受信を可能にするサービスを、2024年内に開始すると発表しました。
衛星電話の仕組み
衛星電話は地上の基地局の代わりに、通信用の人工衛星を利用してデータ通信をしています。
基地局による距離や範囲の制約がなく、地球上のほぼどこからでも通信が可能なので、通信インフラが整っていない地域や、インフラが破壊されるような大規模な災害時にも有効な通信手段として活用されています。
人工衛星を利用したデータ通信には、以下の3つの設備が必要になります。
1)データ通信用の人工衛星(静止衛星・周回衛星)
2)地上設備・地上局(ゲートウェイ)
3)衛星電話対応の端末やスマホ
衛星電話の通信方法は大きく2つあります。
ひとつは地上の電話回線や、インターネット網につながっている地上設備や地上局、ゲートウェイと呼ばれるアンテナ設備と人工衛星が通信することで、データ通信や電話が可能になります。
もうひとつは衛星電話同士で直接人工衛星を経由して通話する方法です。こちらはゲートウェイを含む地上網を利用しないため、災害時も場所を問わない通信が可能です。
静止衛星
赤道の上空、約36,000kmの静止軌道(Geostationary Earth Orbit、GEO)に位置し、地球の自転と同じ速度で回転している通信用衛星です。地球上から見ると常に同じ場所で静止しているように見えるため、静止衛星と呼ばれています。
静止衛星は3~4機の衛星で地球全体をカバーできるほど非常に広範囲の通信エリアを提供しており、北極や南極を除いて全世界で利用可能です。
静止衛星を利用した通信は安定している一方で、衛星自体が高高度にあるため、電波が地表との間を往復するのに0.2秒以上かかってしまいます。そのため、必ずわずかな通信の伝送遅延が発生するというデメリットがあります。
静止衛星を利用する衛星電話サービスは、インマルサットやワイドスターII、スラーヤがあります。
周回衛星
静止衛星よりも低く、低軌道(Low Earth Orbit、LEO)と呼ばれる約500~数千kmの高度を高速で周回している通信衛星です。
人工衛星は低軌道になるほど高速で周回しており、高度550kmの軌道を周回するStarlinkの人工衛星は時速2万7,000kmにも達します。
静止衛星よりも低い位置にあるため伝送遅延が小さく、データ通信速度も速いのが特長で、ゲートウェイや衛星電話に使う端末も静止衛星と比較すると小型で済みます。また、静止衛星がカバーしにくい極地方(地球の南北両極の地方)での利用も可能です。
データ通信速度も速く、個人向けにもデータ通信サービスを展開しているStarlinkは下り最大220Mbpsと、高速データ通信が十分可能です。
しかし一方で、広域の通信網をカバーするためには多数の衛星が必要になるため、AST SpaceMobileは総数168機(計画)の人工衛星を730kmの軌道高度に打ち上げる予定となっています。
周回衛星を利用した衛星電話サービスには、現在は主に船舶向けを中心に利用されているイリジウムのほかに、スペースXや2026年内の提供を目指すスペースモバイル計画があります。
衛星電話とIP電話の違いは?
衛星電話とIP電話は、技術的な面やコストなどで異なる点があります。詳しく見ていきましょう。
通信方式の違い
衛星電話は人工衛星を通じて音声やデータの通信を行うため、地球上のほぼどこからでも通信が可能です。
一方IP電話は、音声情報をデータに変換して、インターネット回線を経由して送受信する通信方式なので、Wi-Fi®や携帯電話の電波が届き、インターネットに接続できる環境が必要になります。
利用できる場所
衛星電話は山間部や海上、上空などの地上の通信インフラがない場所や、インフラが破壊された災害時、イベントなどで利用者が多い場合でも安定して利用可能です。
IP電話はインターネットに接続する必要があるため、通信網が途絶した災害地や、海上や上空のようなインターネットが届かない場所では使えません。また、大勢が一度にインターネットを利用する環境だと、通信が混みあって使えなくなることもあります。
通信の安定性と品質
衛星電話は地上のインフラや天候などの状況に通信状態が左右されにくく、安定していますが、衛星との見通しを遮る障害物があるとつながりにくくなってしまいます。
特に静止衛星を利用した通信には、日本から見て赤道側にあたる南側にビルや山などの障害物がなく、南の空が開けていることが条件になります。
IP電話の通信の安定性と音声品質は、接続しているインターネット回線の速度や混雑に依存します。そのため、高速な回線であればクリアな音声で安定して通話できますが、混雑していたり低速であったりする回線の場合、音声が途切れてしまうことがあります。
利用にかかる費用
衛星電話は、人工衛星を利用するため通話料金が高く、1分あたりの通話料金は大体105~165円程度です。また、利用する衛星によっては1分600円以上になることもあります。
Starlinkのようなデータ通信向けのサービスを除くと、データ通信料も高く、現状では1KBあたり約1~2円程度かかっているため、少しデータ通信を利用しただけでも高額になってしまう可能性があります。
さらに2024年現在では、衛星通話を発信するために衛星電話専用の端末が必要です。
今後、スマホで衛星電話が利用できるスペースモバイル計画などが進めば、現在よりも安価になっていくと予想されますが、現状では法人向けのサービスと考えた方がいいでしょう。
IP電話はインターネット経由で通信するため、衛星電話と比較すると非常に低コストです。IP電話同士の通話やSMSの送受信は、一部のサービスでは無料で利用できることもあります。
衛星電話のメリット・デメリットは?
衛星電話には、地上のインフラに縛られない、全世界で利用できるなどのメリットがありますが、衛星電話を利用する際のデメリットもあります。どのようなメリット・デメリットがあるのか、確認してみましょう。
衛星電話のメリット
地球上のほぼ全域をカバーしており、通信インフラが整っていない山岳地帯や離島などの地域、陸地の基地局からの電波が届かない海上や飛行中の航空機でも通信が可能です。
地上の通信インフラが災害で破壊された場合でも衛星電話は通信が可能で、すでに災害時の重要な通信手段としてさまざまな自治体が導入を進めているほか、非常災害時に総務省から地方公共団体に向けて貸与されることもあります。
また地上の通信インフラに依存しないため、短期間で通信拠点の設置や移動が可能なので、音楽フェスティバルなどの大規模イベントのような限定的な利用でも活用されています。
地上のゲートウェイを通すことで、一般の固定電話や携帯電話との通話も可能で、インターネット接続の利用も可能です。
衛星電話のデメリット
衛星電話のサービスは、通話料金やデータ通信にかかる通信料、月額料金などの費用が高額になります。
また、静止軌道上にある静止衛星を使用する場合、地表との距離が遠いため、どうしても信号の伝送遅延が発生してしまいます。
さらに衛星電話を利用するときにはアンテナと人工衛星の間に障害物がなく、空が開けた状態を確保するなどの条件があり、屋内では通信が困難になるため、地上であればどこでもつながるというわけではないことに注意が必要です。
特に静止衛星を利用した衛星電話では、南向きの場所を確保する必要があり、屋外設置用アンテナや南向きの窓などがなければ、屋内では使用が困難です。
衛星電話の利用方法や活用方法
衛星電話は利用する人工衛星や端末によって、利用方法が異なります。アンテナを中継して利用するタイプの端末は、事前に人工衛星との通信がしやすい場所にアンテナを設置する必要があります。
静止衛星を利用した衛星電話の場合、日本国内から発信するには、屋外で西南西から南南西の方向が見渡せる場所で利用してください。これは静止衛星が赤道上空の軌道上にあるためです。
また、周囲に高い山や建物などの障害物がない場所を選ぶか、ビルの屋上などに出て、より空が開けた状態にするといいでしょう。
衛星電話の活用方法
衛星電話は、現在以下のような目的で活用されています。
1)船舶向けのデータ通信
2)災害時の非常用通信インフラ
3)エベレストなどの標高が高い山への登山時の通信
4)航空機内のWi-Fi
5)イベント会場などでの一時的なネットワークインフラの提供
衛星電話は地上の基地局による制約がないため、通常のスマホでは利用が難しい場所でも活用できます。
今後、個人向けにも衛星電話のサービスが広がることで、活用方法はさらに広がっていくでしょう。
衛星電話を利用するなら、シーンを考えて最適なものを利用しよう
衛星電話は静止衛星、もしくは周回衛星を利用した通話・通信サービスです。個人でも利用できますが、2024年現在では基本的に法人向けのサービスになっています。
個人で衛星電話を利用する場合は端末をレンタルすることもできますが、利用料金が高いので利用するシーンをよく考えて利用するのがおすすめです。
また、楽天モバイルでは2026年内の実用化を目標に、衛星と携帯の直接通信による国内サービスの提供を目指す「スペースモバイル計画」を推し進めています。
2023年4月には世界初スマホ同士の音声通話試験に成功しており、数年後には携帯電話回線では通信が難しかった場所でも、スマホを使った通話や通信が可能になるかもしれません。
一歩早く未来に近付くために、楽天モバイルを検討してみることもおすすめです。
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※ 製品代、オプション料、通話料等は別費用。
※1 混雑時など公平なサービス提供のため速度制御する場合あり。
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※3 iPhone 6s、iPhone 6s Plus、iPhone 7、iPhone 7 Plus、iPhone SE(第1世代)をiOS 14.4/14.4.1/14.4.2のバージョンでご利用になる場合、110/118/119への緊急通話で高精度な位置情報測位の正確性が低下します。iOS 14.5にアップデートすることで高精度な位置情報測位に対応いたします。楽天モバイルのご利用にあたり、iOS 14.4以降ならびにキャリア設定の最新バージョンへのアップデートをお願いいたします。
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