有機ELとは?仕組みや液晶ディスプレイとの違い、メリット・デメリットを簡単に解説

有機ELとは?仕組みや液晶ディスプレイとの違い、メリット・デメリットを簡単に解説
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2025.12.10

スマホやテレビなどのディスプレイについて、「有機EL(ゆうきイーエル)」とは何なのか気になっている人もいるかもしれません。

有機ELは、電圧で発光する有機物での発光現象のことです。有機ELディスプレイでは、鮮やかで美しい画面で映像が楽しめます。
今回は、有機ELとはなにか、仕組みやメリット・デメリットなどを解説します。

目次

有機ELとは?

有機ELとは、「有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence)」の略称で、電圧をかけると発光する有機物における発光現象のことです。

また、有機ELの発光現象を利用した発光ダイオード(電流を流すと光る半導体素子)のことを、OLED(Organic Light Emitting Diode)と呼びます。

ただし、実際に「有機EL」「OLED」という言葉は、発光現象や発光ダイオードそのものだけでなく有機物の発光技術やディスプレイ技術を指し、ほぼ同じ意味で使われています。

日本では「有機EL」という呼び方が一般的ですが、海外では「OLED」と呼ばれています。

有機ELの仕組み

有機ELの材料に電圧をかけると、電極に挟まれた発光層(光を出すための層)で、電子(マイナスの電荷を持つ粒子)と正孔(プラスの電荷を持つ抜け穴のような部分)が再結合することで発光します。

プラス極とマイナス極に挟まれた発光層に電圧をかけると、電子と正孔がそれぞれ注入されます。発光層で再結合した際にエネルギーが高い状態になった後、もとのエネルギーが低い状態に戻るときに光が放出されます。

有機ELディスプレイの方式

有機ELディスプレイでカラー化する方式には、主に以下のようなものがあります。

・RGB塗り分け方式:赤色・緑色・青色の発光材料を蒸着させて(基板上に薄い膜を形成して)並べる

・カラーフィルター方式:カラーフィルターを透過させて赤色・緑色・青色を表現する

スマホなどの中小型サイズのディスプレイでは、赤色・緑色・青色の発光材料を蒸着させて並べて各色を表現する「RGB塗り分け方式」が主流です。

一方、テレビなどの大型サイズのディスプレイでは、「カラーフィルター方式」が主流です。発光材料からの白色光をカラーフィルターに透過させて色を表現します。

有機ELディスプレイと液晶ディスプレイの違い

有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)のようにバックライトを必要とせず、自ら光を放つことが大きな特長です。

一方、液晶ディスプレイは、バックライトと呼ばれる光源を使用し、赤・緑・青のカラーフィルターを透過する光を液晶で制御して色を表現します。液晶は電圧をかけることで分子の並び方が変わり、光を通す量を調整できる物質です。

有機ELディスプレイと液晶ディスプレイの違いをまとめると、次のとおりです。

項目

有機ELディスプレイ

液晶ディスプレイ

発光原理

自発光でバックライトが不要

バックライトからの光を液晶で制御

薄さ・設計自由度

薄型・軽量で設計の自由度が高い

設計の自由度は限定的(バックライトや偏光板が必要で厚みが出やすい)

色の再現性

コントラスト比が高く、黒の再現性に優れる

コントラスト比は劣る傾向で、有機ELと比べると黒がやや灰色がかる

応答速度

極めて高速で残像が少ない

有機ELより遅い傾向

視野角

とても広い

方式による(パネルの種類がIPSなら広め、VA/TNなら狭め)

焼き付き

長期の静止表示で焼き付きリスクがある

有機ELに比べて焼き付きは少ない

価格

高価になりやすい

有機ELに比べて低価格な傾向

映像を表示する仕組みの違いが、色の再現性や応答速度、視野角など性能面の差につながっています。

有機ELディスプレイのメリット

有機ELディスプレイは、高画質で視野角が広く、薄型軽量を実現しやすいメリットがあります。有機ELディスプレイのメリットをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

色が鮮やかで高画質

有機ELディスプレイでは、黒色を表示する際に画素を完全に消灯できるため、深みのある本来の黒色を表現できます。

また、特にスマホなどでよく使われるRGB塗り分け方式の場合、発光素子そのものが色を出すため、色の純度が高く、鮮やかな色彩を再現できます。

バックライトを使う液晶ディスプレイと比較すると、コントラスト比が高くなりやすく、映像全体が引き締まることが、有機ELディスプレイの特長です。映像作品やゲームで細かな色の表現を求める人にとっては大きな魅力となるでしょう。

視野角が広い

有機ELディスプレイは画素自体が発光するため、視野角が広く、斜めから見ても画面がきれいに見やすい特長があります。

たとえば、キッチンからリビングのテレビを斜めに見るような場面でも、色や明るさが損なわれず快適に視聴できます。

一方、液晶ディスプレイでは、方式により視野角が弱点となるものもあります。液晶ディスプレイには、主に以下の方式があり、VA方式やTN方式は視野角が狭く、斜めからは見づらい傾向です。IPS方式は斜めからでも比較的見やすいとされています。

・IPS方式:液晶分子を横方向に動かす方式

・VA方式:液晶分子を垂直に動かす方式

・TN方式:液晶分子をねじるように動かす方式

応答速度が速く動きがなめらか

有機ELディスプレイは、画素ごとに点灯・消灯を切り替えられるため、応答速度が速いことも特長です。分子の向きを変える必要がある液晶ディスプレイと比較すると、高速で映像を表示しやすい仕組みとなっています。

この特性は、特にシビアな操作が求められるジャンルのゲームで大きなメリットとなります。

さらに、高リフレッシュレートに対応したテレビやモニターを選べば、より快適にゲームをプレイできます。リフレッシュレートとは、1秒間に画面を何回更新できるかを示す数値のことで、この値が高いほど映像の動きが滑らかになります。

消費電力が少ない

有機ELディスプレイは、バックライト不要で自ら発光し、黒を表示する画素を消灯できる点で、消費電力が抑えやすいとされています。

どの程度消費電力が抑えられるかは、画面の明るさや色などの条件によって変わります。たとえば、スマホやパソコンではバッテリーを長持ちさせるメリットがあります。

薄くて軽い

有機ELディスプレイでは、画素が自ら発光しバックライトや偏光板などが不要なため、軽量で薄型なディスプレイをつくることが可能です。

また、液晶ディスプレイでも使われるガラス基板の代わりに、プラスチック基板が使用できるため、曲面ディスプレイや折り曲げできるフレキシブルディスプレイも実現できます。

有機ELディスプレイのデメリット

有機ELディスプレイの製品の利用を考えているなら、価格面や焼き付きの可能性など、いくつか押さえておくべきデメリットもあります。有機ELディスプレイのデメリットを以下で見ていきましょう。

価格が高い

有機ELディスプレイは製造コストが高く、液晶ディスプレイの製品と比べると販売価格もやや高めです。

有機ELテレビは高価な製品が多く、有機ELディスプレイを搭載したスマホ・タブレットも高級なモデルが多い傾向にあります。

焼き付きが起こることがある

有機ELディスプレイは、静止画を長時間表示し続けたときに「焼き付き」が起こることがあります。焼き付きは、ディスプレイの経年劣化や同じ画面を長時間表示し続けることなどが原因で、以前画面に表示されていた映像の残像がうっすらと表示され続ける現象のことです。

焼き付きを防止するためには、定期的に画面を切り替えて同じ画面を長時間表示しないようにするなど、少し注意しながら使用する必要があります。

製品によっては、焼き付きを防止する機能・技術が盛り込まれているものもあります。たとえば、AppleのiPad Pro(M4およびM5)の有機ELディスプレイでは、補正データで明るさを自動調整して焼き付きを低減する機能が搭載されています。

寿命が短い傾向にある

有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイと比べると製品寿命が短い傾向にあります。発光に使われる有機物は経年劣化が避けられず、長期間の使用で徐々に明るさや色合いが変化していくためです。

目安として、有機ELテレビの寿命は約3~5万時間、液晶テレビの寿命は約6~10万時間とされています。

ただし、これはあくまで一般的な目安であり、メーカーの技術改良や素材の進化で寿命は延びています。最新の製品では以前より長持ちするものも増えていて、使い方次第では十分な耐久性を発揮します。

有機ELディスプレイの駆動方式と活用例

有機ELディスプレイの駆動方式も一通り確認しておきましょう。

駆動方式は、画素が格子状に並べられた「ドットマトリクス方式」と、画素が決められた位置にある「セグメント方式」の大きく2つがあります。

ドットマトリクス方式は、さらに「PMOLED(パッシブマトリクスOLED)」と「AMOLED(アクティブマトリクスOLED)」に分類されます。

それぞれの特徴は以下のとおりです。

駆動方式

 

特徴と活用例

ドットマトリクス方式

PMOLED

・格子状に並べられた画素を、行と列の電極でまとめて点灯させる方式
・活動量計やスピードメーターなど、低解像度で小型のディスプレイに使われる

AMOLED

・各画素を制御するトランジスタ(電流のオン/オフを制御する)とコンデンサ(電気を一時的にためる)があり、画素ごとに独立して点灯できる方式
・スマホやタブレット、テレビなどのディスプレイに使われる

セグメント方式

・決められた位置にある画素を点灯・消灯させる方式
・デジタル時計や電卓などのディスプレイで使われる

それぞれの方式に適したディスプレイサイズがあり、用途によってよく利用される方式が異なります。

有機ELを知って製品の購入などに役立てよう

有機ELは、有機エレクトロルミネッセンスと呼ばれる有機物の発光現象を指す言葉で、発光技術やディスプレイ技術を指す用語としても使われます。

有機ELディスプレイは、色の鮮やかさや視野角の広さ、応答速度や消費電力などの面でメリットがあり、薄くて軽いディスプレイが実現できるのも魅力となっています。

有機ELの特徴を知ってスマホやテレビの購入に役立てていきましょう。

また、スマホで動画やゲームをキレイな映像で楽しむなら、最新の有機ELディスプレイを搭載したスマホへの買い替えがおすすめです。

買い替えの際は、携帯電話会社もあわせて見直すと、最適な料金プランが見つかる可能性があります。

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