Wi-Fi 8とは?Wi-Fi 7との違いや新技術・メリットをわかりやすく解説

現在、次世代のWi-Fi®規格「Wi-Fi 8」の開発が進められており、暫定的に対応した製品も近い将来に登場が見込まれています。Wi-Fi 8は従来の規格と比べて接続の信頼性や安定性が高まり、電波が弱い場所や混雑した環境でも、さらに快適な通信が可能です。
今回は、Wi-Fi 8の性能や搭載が検討されている新技術、Wi-Fi 7との違い、メリットや注意点などをまとめて紹介します。
Wi-Fi 8とは
Wi-Fi 8はWi-Fi 7に次ぐ次世代のWi-Fi規格で、規格名は「IEEE 802.11bn」です。
無線規格(Wi-Fiなどの通信方式のルール)の標準化を推進する米国の電気電子学会(IEEE)により、2026年現在策定が進められていて、2028年ごろに最終的なスペックが決定される見込みです(時期は前後する可能性があります)。
後述する技術も、標準化の過程で変更される可能性があります。
一方、市場には2026年後半以降、各社のドラフト対応ルーター(暫定的なスペックに対応したルーター)が製品として登場する可能性があります。
Wi-Fi規格では、新技術をいち早く求める需要に応えるため、最終的なスペックの確定に先立ってドラフト版(暫定版)対応製品が発売されるのが一般的です。
スマホ製品(iPhone/Android™スマホ)では、ドラフト版対応ルーターの発売より後の時期に対応製品の登場が予想されます。
Wi-Fi 7では速度向上が重視されていたのに対し、Wi-Fi 8では開発コンセプトにUltra-High Reliability(超高信頼性)が掲げられ、「通信の途切れにくさ」「遅延の少なさ」といった信頼性の向上が前面に打ち出されているのが特徴です。
家庭でのVR※1/AR※2やスマートホームから、広域・高密度なイベント会場での通信、産業分野のIoT※3まで、高信頼が求められる用途で活用が期待されています。
※1 Virtual Realityの略称。仮想空間を現実のように体験できる技術。
※2 Augmented Realityの略称。現実にデジタル情報を重ねて表示する技術。
※3 Internet of Thingsの略称。モノをインターネットにつなぐ仕組み。
Wi-Fi 8とWi-Fi 7以前の違い
Wi-Fi 8を含むWi-Fi規格の一覧は、次のとおりです。Wi-Fi 8は、Wi-Fi規格の第8世代に位置づけられます。
|
世代 |
名称 |
規格名 |
最大通信速度 |
周波数帯 |
|---|---|---|---|---|
|
第8世代 |
Wi-Fi 8 |
IEEE 802.11bn |
46Gbps |
2.4GHz/5GHz/6GHz |
|
第7世代 |
Wi-Fi 7 |
IEEE 802.11be |
46Gbps |
2.4GHz/5GHz/6GHz |
|
第6世代 |
Wi-Fi 6E |
IEEE 802.11ax |
9.6Gbps |
2.4GHz/5GHz/6GHz |
|
第6世代 |
Wi-Fi 6 |
IEEE 802.11ax |
9.6Gbps |
2.4GHz/5GHz |
|
第5世代 |
Wi-Fi 5 |
IEEE 802.11ac |
6.9Gbps |
5GHz |
|
第4世代 |
Wi-Fi 4 |
IEEE 802.11n |
600Mbps |
2.4GHz/5GHz |
|
第3世代 |
- |
IEEE 802.11g |
54Mbps |
2.4GHz |
|
第2世代 |
- |
IEEE 802.11a |
54Mbps |
5GHz |
|
第2世代 |
- |
IEEE 802.11b |
11Mbps |
2.4GHz |
|
第1世代 |
- |
IEEE 802.11 |
2Mbps |
2.4GHz |
Wi-Fi 7との違いは、次のとおりです。
|
項目 |
Wi-Fi 8 |
Wi-Fi 7 |
|---|---|---|
|
最大通信速度 |
46Gbps |
46Gbps |
|
最大帯域幅 |
320MHz |
320MHz |
|
変調方式※1 |
4096-QAM |
4096-QAM |
|
MLO※2 |
対応 |
対応 |
|
DRU※3 |
対応 |
非対応 |
|
DSO※4/NPCA※5 |
対応 |
非対応 |
|
マルチAP連携※6 |
対応 |
非対応 |
|
重視される特徴 |
信頼性・安定性 |
高速通信 |
※1 電波にデータを載せる方式のこと。
※2 Multi-Link Operationの略称。複数の周波数帯を同時に利用できる技術。
※3 Distributed Resource Unitsの略称。端末からルーターへの通信を届きやすくする技術。
※4 Dynamic Sub-band Operationの略称。周波数帯域を効率よく使う技術。
※5 Non-Primary Channel Accessの略称。空いているチャンネルで通信しやすくする技術。
※6 Multi AP coordinationの訳。複数のアクセスポイントで通信を安定させる技術。
Wi-Fi 7では「Extremely High Throughput(極めて高いスループット)」を掲げていて、高速通信が重視される一方で、Wi-Fi 8では、「Ultra-high reliability(超高信頼性)」が重視されています。
最大通信速度はWi-Fi 7と同じ最大46 Gbpsですが、Wi-Fi 8のDRU、DSO/NPCA、マルチAP連携をはじめ、混雑した環境や電波の弱い場所でも安定した通信を維持する技術が新たに導入されています。
Wi-Fi 8の特徴については、「Wi-Fi 8の新技術」で紹介しています。
Wi-Fi 8で通信性能はどれくらい向上する?

Wi-Fi 8では、Wi-Fi 7と比較して以下のような通信性能の向上が目標とされています。
- 信号状況が悪い環境で最大25%高いスループット
- 通信の遅延が最大25%改善
- アクセスポイント切り替え時のパケット損失を最大25%削減
信号状況が悪い環境で最大25%高いスループット
スループットとは、一定時間に送受信できるデータ量のことです。Wi-Fi 8では、信号状況が悪い環境(電波が弱い、干渉が多いなど)で、Wi-Fi 7より最大25%高いスループットの実現を目標としています。
通信の遅延が最大25%改善
Wi-Fi 8では、Wi-Fi 7と比べて、通信中に発生することがある大きな遅延を最大25%低減することを目標としています。オンラインゲームやVR/AR、Web会議など、低遅延が求められる用途でも、いっそうの改善が期待できます。
アクセスポイント切り替え時のパケット損失を最大25%削減
Wi-Fi 8では、端末の接続先がアクセスポイント間で切り替わるときのパケット損失(通信データの欠落)を最大25%削減することを目標としています。
工場や公共施設などの広い領域を移動してアクセスポイント(Wi-Fiの電波を提供する通信機器)が切り替わる場合も、途切れにくい通信が期待できます。
Wi-Fi 8の活用シーン
Wi-Fi 8は、家庭内での通信からオフィスや産業分野まで幅広いシーンでの活用が見込まれています。
- 広域・高密度な環境(イベント会場、スタジアムなど)での信頼性の高い通信
- 低遅延が求められるオンラインゲーム、VR/AR
- スマートホームやIoTデバイスの利用
- オフィスでのWeb会議や移動しながらのビデオ通話
- 堅牢な通信(途切れにくく安定した通信)が求められる産業分野での利用
Wi-Fi 8の新技術

Wi-Fi 8に採用されている主な技術を、以下で具体的に見ていきましょう。
ELR(Wi-Fiの届く距離を広げる技術)
ELR(Enhanced Long Range)とは、Wi-Fiの届く距離を広げる技術です。
従来のWi-Fiでは、ルーターからの電波が届いても、スマホやノートパソコンなどの端末からの電波がルーターに届かないといった送信電力の不均衡の問題がありました。
ELRでは、パケット(通信データを区切る基本的な単位)構造の改良と、より堅牢なコーディング(データを送受信する際の方式)を採用し、不均衡を解消して通信可能な範囲を広げています。
異なる階や離れた部屋、ガレージ、屋外カメラなど電波が届きにくい場所でも、安定した通信が期待できます。
DRU(端末からルーターへの通信を届きやすくする技術)
DRU(Distributed Resource Units)とは、信号を広い周波数の範囲に分散させることで、送信電力に制約がある環境でも、端末からルーターへの通信を届きやすくする技術です。
限られた送信電力でも効率よく電波を届けられ、ルーターから距離の遠い端末や消費電力を抑えた低電力の端末に対しても、信頼性の高い接続を維持できます。
DSO(周波数帯域を効率よく使う技術)
DSO(Dynamic Sub-band Operation)とは、ひとつのチャンネル(通信に利用する周波数のまとまり)を複数の小さなサブバンド(通信に利用する周波数帯域の一部)に分割して、それぞれを別々の端末に同時に割り当てる技術です。
DSOにより、対応する帯域幅が異なる端末が混在する環境でも、周波数の無駄を減らして効率よく通信できます。
NPCA(空いているチャンネルで通信しやすくする技術)
NPCA(Non-Primary Channel Access)とは、プライマリチャンネル(主に使用する周波数の区画)がふさがっているときに、空いている別のチャンネルで通信できる技術です。
従来は、別のチャンネルが空いていても、プライマリチャンネルが解放されるまで待つ必要がありました。NPCAでは、別のチャンネルで通信を可能にすることで、待ち時間を減らし、ネットワーク混雑時でも通信速度や応答性を維持しやすくなっています。
UEQM(通信状態に応じて速度低下を抑える技術)
UEQM(Unequal Modulation Across Spatial Streams)とは、ストリーム(通信データの流れ)ごとに信号品質が異なる場合でも、通信全体の効率を落としにくくする技術です。
従来のWi-Fiは、すべてのストリームを同じ変調方式(電波にデータを載せる方式)で動かすために、状態の悪いストリームにあわせて全体の速度が下がる課題がありました。
UEQMでは、ストリームごとに信号品質に応じた変調方式を調整できるようになり、状態のよいストリームはより高速な通信を維持できます。
新たなMCSレベルの追加(通信速度をきめ細かく調整する仕組み)
MCS(Modulation and Coding Schemes)とは、信号品質に応じて通信速度や安定性を切り替える仕組みです。
従来のWi-FiではMCSのレベル間の差が大きく、信号品質が少し悪化しただけで通信速度が一気に落ち、ラグ(通信の遅延)やバッファリング(動画などの読み込み待ち)が発生する原因になっていました。
Wi-Fi 8では、新たなMCSのレベルが追加され、信号品質の変化に応じてきめ細かく通信速度を調整できるようになり、急激な通信速度の低下を抑えやすくなっています。
マルチAP連携(複数のアクセスポイントで通信を安定させる技術)
マルチAP連携(Multi AP coordination)とは、複数のアクセスポイントが連携して動作することで、電波干渉を抑えて通信を安定化させる技術です。
複数のネットワークが重複する高密度な環境では、近くに設置されたアクセスポイント同士が電波干渉を起こし、通信速度や安定性が低下することがあります。
マルチAP連携では、アクセスポイントが互いに通信タイミングや送信電力を調整することで、電波干渉を抑えて混雑した環境でも安定した通信を維持しやすくなります。
ローミングの改善(移動時に通信を途切れにくくする技術)
Wi-Fi 8では、ローミング(接続先のアクセスポイントを自動で切り替える仕組み)が改善され、端末が移動したときの通信の途切れが起きにくくなっています。
従来のWi-Fiでは、別のアクセスポイントに切り替わるときに一度通信が切断されるため、通話や動画が途切れることがありました。
Wi-Fi 8では、新しい接続を確立してから前の接続を切る仕組みが採用され、複数のアクセスポイント間を移動してもスムーズに切り替えられます。
Wi-Fi 8対応ルーターを導入するメリット

Wi-Fi 8対応ルーターを導入すると、次のようなメリットがあります。
- 電波が弱い/混雑した環境でも安定して通信できる
- 通信の遅延が起きにくい
- 移動しても通信が途切れにくい
ルーターから離れた部屋や屋外、多くの端末が接続する場所など、通信が不安定になりやすい環境でも安定した通信が可能です。
Wi-Fi 7と最大通信速度は変わらないものの、通信しづらい環境では、より快適な通信が期待できます。Wi-Fi 6/6E以前から変更する場合は、最大通信速度も向上します。
また、通信の遅延を軽減する技術が盛り込まれているため、オンラインゲームやWeb会議でもラグや音声・映像の乱れが起きにくくなる点もメリットです。さらにローミングの改善により、移動しながらビデオ通話するときも、通話や映像が途切れにくくなります。
Wi-Fi 8を利用する際の注意点
Wi-Fi 8を利用する際には、次の点に注意が必要です。
- 用途によっては過剰な性能になる場合がある
- Wi-Fi 7からの買い替えでは、違いを感じにくい場合がある
- Wi-Fi 8に対応するスマホやパソコンなどの端末が必要
用途によっては、Wi-Fi 7以前の規格で十分な可能性があり、Wi-Fi 8は過剰な性能になる場合もあります。たとえば、動画やSNSをライトに楽しむ程度の使い方であれば、Wi-Fi 8までは不要なことも多いかもしれません。
また、Wi-Fi 7から環境を乗り換えた場合、数世代前の規格から乗り換える場合と比べると、大きな差は感じづらいと考えられます。すでにWi-Fi 7を利用している場合などは、この点も注意が必要です。
そのほか、Wi-Fi 8を利用する場合は、ルーター側だけでなく、スマホやパソコンなどの端末側も規格への対応が必要です。Wi-Fi 8の利点を十分に発揮するためには、製品の買い替えも必要になるでしょう。
Wi-Fi 8の特徴を理解して導入を検討しよう
Wi-Fi 8は、Wi-Fi 7に次ぐ次世代のWi-Fi規格です。信頼性や安定性の向上が重視されていて、家庭・オフィス・産業分野まで幅広いシーンで活用が期待されています。
2028年ごろに最終的なスペックが確定する見込みですが、早ければ2026年内にも市場にドラフト対応ルーターが登場する可能性もあります。Wi-Fi 8を導入すれば、より高速で安定した通信環境の構築が可能です。ぜひWi-Fi 8の今後の動向に注目していきましょう。
また、通信環境の改善を考えているなら、Wi-Fiと併せて携帯電話回線の見直しも選択肢です。携帯電話会社の乗り換えも含めて見直せば、より自分にあった料金プランが見つかる可能性が高まります。
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